クラウドファンディングと言うと、「みんなでお金を出し合い、何か一つの商品を開発する」であったり、「映画などのコンテンツを制作する」といった用途のみに使われると思っている方も少なくないでしょう。
確かに、それは現在の日本での主なクラウドファンディングの主な利用目的とも言えます。
しかし、それ以外にも金銭をリターンとして得ることを目的とした「投資型」のクラウドファンディングも、実は多くの人に利用されています。
ここでは、投資型クラウドファンディングの概要や種類、メリットについて詳しく解説していきます。
目次
投資型クラウドファンディングとは
投資型クラウドファンディングとは、投資したお金に対し金銭的なリターンを得ることを目的としたクラウドファンディングのことです。
クラウドファンディングでは、「購入型」が一番よく知られています。
購入型クラウドファンディングの場合、投資した対価として、何らかのサービスや商品、コンテンツなどが提供されることが多いです。
それに対し、投資型クラウドファンディングの場合、ほとんどのケースでは投資の対価は「金銭」です。
例えば、5パーセントのリターンが提示されたクラウドファンディングに100万円を投資した場合、105万円が投資した人(投資家)に戻ってくるはずです。
ただし、投資である以上、確実に金銭的なリターンが得られるとは限りません。
場合によっては、投資したお金が減ってしまうこともあり得ます。
それだけに、投資型クラウドファンディングを利用する際には、その内容をよく知り、適切な投資対象なのかどうかよく見極める必要があるのです。
投資型クラウドファンディングの種類
投資型のクラウドファンディングは、大きく次の3種類に分けることができます。
それぞれの特徴を解説していきましょう。
投資型クラウドファンディングの種類
- 融資型(ソーシャルレンディング)
- 不動産投資型
- 株式投資型
融資型(ソーシャルレンディング)
融資型クラウドファンディングは、インターネットを介してお金を貸したい個人投資家と、お金を借りたい事業者を結びつけるクラウドファンディングです。
別名「ソーシャルレンディング」とも呼ばれます。
個人投資家とお金を必要とする事業者の間に、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)を運営する会社が入ります。
その運営会社が投資家からお金を少しずつ集め、まとまったお金を必要とする事業者に貸し付けます。
貸付けの際には金利を設定し、金利の一部が投資家に対して配当金として支払われる仕組みです。
そのため、投資家は貸金業登録をしていなくても、お金を貸し付けることによる金利収入を得ることができます。
不動産投資型
不動産投資型クラウドファンディングは、主に不動産会社が運営するクラウドファンディングです。
不動産投資型クラウドファンディングも、インターネット上で不動産会社が個人投資家から少しずつお金の出資を募ります。
そして、集まったお金で不動産会社が不動産物件を取得します。
不動産会社は、取得した不動産を運営して入ってくる家賃収入を投資家に配当する仕組みです。
また、不動産をリフォームして、元値より高値で売却した後の利益を投資家に配当する案件もあります。
したがって、投資家は自分で不動産物件を取得せずとも不動産投資をすることができます。
株式投資型
株式投資型クラウドファンディングは、株式上場前の有力なベンチャー企業の株式を購入できるクラウドファンディングです。
有力なサービスや商品の開発力には自信があるけれど、資金が足りないというベンチャー企業が利用することが多いです。
株式投資型クラウドファンディングサイトでは、資金が必要な企業が投資家に対して「このような有力なベンチャー企業が今お金を必要としています」というような案件を作成して公開します。
そして、投資家はそのベンチャー企業のサービスや財務状況を見て、投資先として妥当だと判断したら株式を購入します。
ベンチャー企業は、株式を購入してもらうことで、事業に必要な資金を調達することができるメリットがあります。
また、投資家は格安でベンチャー企業の株式を購入し、その企業が上場した場合に大きな売却益を得ることができるメリットがあるのです。
融資型クラウドファンディングの特徴とメリット
まず、「融資型」のクラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の特徴、および投資する際のメリットを紹介していきましょう。
「融資型」の特徴とメリット
- 利回りが3%~10%と高い
- 収益が一定
利回りが3%~10%と高い
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)は、他の配当型の投資方法と比べて利回りが高いというメリットがあります。
2020年現在、日本で運営されている融資型クラウドファンディングの案件情報を見ていくと、その利回りは年利3パーセントから10パーセントであるものが一般的です。
平均すると、5パーセントから6パーセントの利回りになり、配当型の投資方法としては高い水準です。
例えば、投資信託の場合4パーセント前後が一般的ですし、株式投資の配当金の場合は2パーセント前後が平均です。
そういった投資方法と比較して高利回りであるため、高い収益を求める人にはメリットが大きいと言えます。
また、会社によっては年利10パーセントの案件もあります。
海外で運用される案件は、日本の法律とは異なる法律で運用されるため、予定利回りが12パーセントといった案件もあります。
収益が一定
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の大きな特徴に、「事業運営による利益」ではなく「お金を貸した際の金利」が収入になる点があります。
融資する際は、あらかじめ貸付期間および金利を設定します。
そのため、投資家には基本的には予定通りの配当金が毎月支払われます。
投資家にとっては、貸付先の事業がそこまで順調ではなかったとしても、毎月同額の配当が得られるメリットがあるのです。
仮に利益連動型の配当を行う投資方法であれば、事業利益がほとんど出なかった場合、もしくはマイナスの場合は配当金がなくなってしまうリスクがあります。
収益が高めで、かつその収益も一定であることが融資型クラウドファンディングのメリットだと言えるでしょう。
不動産投資型クラウドファンディングの特徴とメリット
続いては、「不動産投資型」のクラウドファンディングの特徴とメリットを解説していきましょう。
不動産投資型クラウドファンディングは、融資型クラウドファンディングと比べると利回り自体はやや低めです。
あらかじめ投資家に対して提示されている想定利回りは年利3パーセントから6パーセントほどのものが多く、平均は4パーセント前後です。
ただし、他の不労所得が得られる投資方法と比較して低い利回りというわけではありません。
「不動産投資型」のメリット
- 大きな利益が見込める可能性がある
- 運用情報が詳細に公開されている
- 自ら不動産を運用する手間がかからない
大きな利益が見込める可能性がある
不動産投資型クラウドファンディングは、運用される不動産次第で大きな利益が見込めます。
不動産の売却益が出たときには、特に大きな利益が期待できます。
不動産は、相場によって価格が大きく変動し、また需要と供給の関係で相場よりも高い値段で売却することも可能です。
そして、不動産投資型クラウドファンディングの場合は、「家賃収入」による配当金だけではなく、売却した際の「売却益」を配当に盛り込んでいる案件もあります。
もちろん、想定通りの値段で売れなければ、投資家は損失を被ることがあります。
しかし、売却益が期待できそうな案件を選んで投資すれば、融資型クラウドファンディング以上に大きな利益を狙うことができます。
融資型クラウドファンディングよりも、リターンもリスクも大きいと言えるでしょう。
運用情報が詳細に公開されている
不動産投資型クラウドファンディングでは、運用対象不動産の情報が詳細に公開されることが特徴だと言えます。
融資型クラウドファンディングの場合、貸付先企業名や運用事業の情報がすべて公開されているわけではありません。
お金を借りていることを知られたくない企業への融資案件は、情報が伏せられているものもあります。
しかし、不動産投資型クラウドファンディングの場合、ほぼすべての案件において、運用不動産に関するの細かい情報が詳細に公開されています。
不動産投資型クラウドファンディングで公開される情報の例 |
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不動産投資型クラウドファンディングでは、情報が公開されないがために投資家がリスクを判断できないということはありません。
しっかりとリスクを確認してから投資先を選べるのです。
不動産が値上がりするか値下がりするかで、投資家の収益は大きく異なります。
そのため、賃貸需要が高く、売却時に値上がりが見込めそうな不動産物件に投資することが重要です。
つまり、運用される不動産の情報を知ることは、投資の成否を左右する重要なファクターの一つなのです。
自ら不動産を運用する手間がかからない
不動産投資型クラウドファンディングは、不動産投資に興味があるけれど、自分で購入したり運用したりすることが難しいという人のニーズにも応えられます。
不動産投資型クラウドファンディングでは、不動産物件の運用は不動産会社に任せられています。
つまり、投資家がわざわざ自分で入居者を探したり、物件の管理や売却活動を行ったりする必要がありません。
不動産会社に利益を出すためのすべての活動を委託できるため、不労所得を得る感覚で投資できるのです。
不動産投資を始めてみたいけれど、資金面や作業面で始めることが難しいという方は、不動産投資型クラウドファンディングを通じて間接的に不動産投資を行うと良いでしょう。
株式投資型クラウドファンディングの特徴とメリット
では、株式投資型クラウドファンディングにはどのような特徴やメリットがあるでしょうか?
「融資型」や「不動産投資型」とは大きく異なった特徴があります。
融資型や不動産投資型クラウドファンディングは、定期的に配当金を得ることを目的としています。
いわゆる「インカムゲイン」と呼ばれる利益が得られる投資方法です。
一方で、株式投資型クラウドファンディングは「インカムゲイン」ではなく「キャピタルゲイン」つまり「売却益」を狙う投資方法です。
株式投資型クラウドファンディングでは、投資先の企業が上場するのを待ち、株式を売却して初めて利益が発生します。
そのため、株式を長期間保有しなければならず、安定した収入を得られるわけではありません。
「株式投資型」の特徴
- 有望なベンチャー企業の株を格安で購入できる
- 莫大な上場益を期待できる
- 株主優待や配当金をもらえることがある
有望なベンチャー企業の株を格安で購入できる
キャピタルゲインで大きな金額を得るためには、できるだけ安い値段で株式を購入する必要があります。
株式投資型クラウドファンディングは、有力なベンチャー企業の株を上場前の格安な値段で購入できます。
それが最も大きなメリットだと言えるでしょう。
莫大な上場益を期待できる
株式投資型クラウドファンディングで購入した企業が上場に成功すれば、一気に株価が値上がりする可能性が高いです。
そうすれば、株式投資型クラウドファンディングで格安で購入した株を売却し、大きな利益を得ることができるのです。
上場し値上がりすればすぐに売っても良いでしょうし、数年待って大きく値上がりした段階で売るといった選択肢を取ることもできます。
投資した金額に対し、10倍や20倍といった大きな金額で売ることも不可能ではありません。
株主優待や配当金をもらえることがある
投資対象の銘柄次第では、株主優待や配当金がもらえる場合があります。
そういった情報は案件情報に詳細に公開されています。
また、配当だけではなく利用するサイトによっては、投資したお金が所得から控除される仕組みである「エンジェル税制」を利用することができます。
各クラウドファンディングがおすすめの人
最後に、それぞれのクラウドファンディングがどういった人に向いているのかについてお伝えしましょう。
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)をおすすめする人は、高い収益性を確保したい方です。
融資型クラウドファンディングの利回りは年利10パーセントの案件もあるなど、不労所得を得る投資方法としてはかなり高い水準だからです。
また、貸付金利から投資家へ配当がなされるため、配当を定額で得ることができます。
ソーシャルレンディングについては、こちらでより詳しく解説されています。
不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資型クラウドファンディングがおすすめの人は、詳細な情報を自分で確認してから慎重に投資したいという方です。
運用される予定の不動産情報が開示されるからです。
リスクがないわけではありませんが、住所から地価を確認し、不動産の資産価値や収益性を調べてから投資できるのです。
そのため、利回りが明らかに高いと思われる案件があった場合、自ら調査することによって、相場に対して妥当ではないと判断できるのです。
不動産投資型クラウドファンディングに関しては、こちらで詳しく解説されています。
株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングがおすすめなのは、大きな利益を狙いたい方です。
株式投資型クラウドファンディングの成功事例では、投資先の企業が上場し、投資額の10倍以上のリターンが得られたという案件もあるくらいだからです。
株式投資型クラウドファンディングは「融資型」や「不動産投資型」とは異なり、定期的な配当を得ることができません。
それどころか、投資したベンチャー企業が上場しないと、利益を得ることすらできません。
しかし、ひとたび投資先の企業が上場すれば、得られるリターンは「融資型」や「不動産投資型」とは比較にならないほど大きいでしょう。
まとめ
投資型クラウドファンディングについて、「融資型」「不動産投資型」「株式投資型」に分けて紹介しました。
それぞれクラウドファンディングの仕組みがご理解いただけたでしょう。
「融資型」「不動産投資型」「株式投資型」のいずれのクラウドファンディングも、1万円や5万円といった少額から投資できる会社が多いです。
そのため、投資型クラウドファンディングで利益を出したいと考えている方は、まず実際に少額を投資してみて、それぞれのクラウドファンディングの特徴を身をもって経験することをおすすめします。
それぞれクラウドファンディングのメリットやリスクを身をもって経験し、徐々に投資金額を増やしていけば、大きな損失が発生するリスクを避けながらご自身の資産を増やせるようになるでしょう。